レクリエーショナル・ビークル的音楽雑記

音楽にまつわるお話を徒然なるままにします。好きなもの紹介・新譜レビュー等

日本の音楽ムーヴメントに於けるリバイバルの意味を考える

ブームメントとしての「リバイバル

あらゆる事物にムーヴメントという概念は存在する。

このムーヴメントという気流を使って商業効果を生み出すということは、資本主義下の成長戦略として1つのセオリーである。

 

また、ムーヴメントには「リバイバル」という1つの周期性を伴った概念も併存する。

例えばファッション。

少なくとも2010年代の後半以降、ハイファッションブランドはストリートブームを牽引してきたし、それは90年代ストリートブームの再来とも言われる。

飽和化した概念でありふれた現代の賢者達は、旧式の栄華を持ち出し、形を変えては新たな科学変化を生み出すことを試行するのだ。

 

そして、音楽に関してもリバイバルという概念は存在している。

 

利用媒体から見る「リバイバル

近年、世界規模では勿論、日本の音楽市場でもある典型的な現象が起きている。

CD売上の減少だ。

 

日本では1998年をピークとして、その後はCD年間販売数が減少し続けている。

2018年には既に98年の半分以下にまで販売数が落ち込んでおり、今後も減少の一途を辿り続ける可能性が濃厚だ。

それには、この国自体の景気変動の影響もあるものの、95年に生まれた音声圧縮技術(mp3)や、2000年以降に生まれたiTunes Storeでのダウンロード配信、昨今ではspotifyApple Musicをはじめとするサブスクリプションサービスなどが、CDの権威性をじわじわと削ぎ落とし続けている。

実際に僕の周りでもそうだが、CDトレー付のPCがある環境や、そもそもCDを聴ける様な環境を整えていることが最早一般的ではなくなってきている。

 

一方で若年層を取り込んだ、あるリバイバルの現象が起きている。

レコードの市場規模の回復傾向である。

 

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上記の記事を参考にすると、2010年以降、レコードの生産枚数は増え続け、2019年には年間生産数が120万枚にも及ぶ規模にまで復権の様相を呈してきているとのことだ。

 

僕自身、週末の近場のレコードショップの人の出入りには激しさを感じているし、最近開店した渋谷・ミヤシタパークの「フェイスレコード」は店内のレイアウトのモダンさも印象的であった。レコードを推し出す企業は、しっかりと若年層向けの間口をビルドアップしてきている。

 

勿論規模としてはまだまだニッチの域を出ないし、レコードが未来の音楽市場に於いて主流になることは恐らくないであろうが、こうした需要がレコードのサブカルチャーとしての存在感を発揮させていることは事実である。

 

(ちなみにカセット人気の再興なる話題も、度々出たりもしている。レコードと比べてもニーズのマニアックさがまた1つ奥深くな気もするが…)

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音楽ジャンルから見る「リバイバル

音楽ジャンルという観点からでも、リバイバルという概念は音楽史にしっかりと爪痕を残している。

 

例えば2010年代後半から勢いを増してきたシティポップは、1970〜80年代でも流行を拡げたジャンルである。

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(竹内まりや細野晴臣はシティポップシーンの基盤を形成した代表格の一部)

 

近年はシティポップ自体の復興の影響と言えるのかは分からないが、当時のシティポップやニューミュージック、いわゆる昭和歌謡と呼ばれる類も、レコードを手に取る若年層を中心に再び脚光を浴びてきている。

 

 

また、シティポップの再興からもう少し歴史を遡ると、2000年代以降のテクノポップブームも記憶に新しい。

 

テクノポップも元々は1970年代を中心に勢いを増したジャンルである。

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(YMOを始め、P-MODELヒカシューなどからブームの基盤が形成された)

 

80年代以降、テクノポップという言葉はメジャーシーンから徐々に立ち消え、不毛の時代を送る訳だが、2000年代に入ってテクノポップは再び脚光を浴びることになる。

その中心に君臨していたのが、Perfumeというモンスター的グループである。

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(チョコレートディスコは聴いたことのない人の方が珍しいのではないか)

 

不発に終わったリバイバル未遂

過去の栄光を持ち出しても必ずしもその時代に響く訳ではないというのは、ムーヴメントの摂理でもある。

 

2008年に満を辞してのデビューと思われたGIRL NEXT DOORもその1つと言えるであろう。

小室サウンドの再来という看板を掲げたこのグループは、華々しいデビューを飾ったものの、大きなインパクトを残すことなく、5年間の活動に幕を閉じている。

 

また、ヴィジュアル系のシーンは90年代の黄金期をピークに徐々に勢いをなくしていく中で、幾度もの再起を狙う動きを見せていた。

2000年代中頃から「ネオヴィジュアル系」と銘打たれたそれは、リバイバル的な動きの典型であったが、いくつものバンドのメジャーデビューを後押ししたものの、業界が再び音楽界の主流に戻るまでの力を取り戻すことはなかった。

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(the GazettEはネオヴィジュアル系の世代の中でも未だに大規模な動き見せている少数のバンドの内の1つである)

 

リバイバル」の本意とは

上記の様な事象を考えていく内に、僕はリバイバルを遂げる音楽について、文字通り「リバイバル」と捉えることは適切ではないと思う様になった。

何故ならブームの発火点にいる人達は「古き良き」や「過去の栄光」を取り戻そうとしている訳ではなく、全く新しい体験としてそのコンテンツを楽しんでいることが多く見受けられるからだ。

 

時代やテクノロジーの発達と共に音楽も進化するし、リバイバルに馬力を託すとしても何かの付加価値は必ずと言っていいほど必要で、

それは勿論音楽性だけの話ではないし、時代に沿った歌詞観、ルックスやプロモーション、パフォーマンス諸々も然りである。

 

自戒も込めて、こういった考え方は頭の隅にでも常に添えておこうと思う。

 

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(あいみょんの音楽性は必ずしも真新しさがある訳ではないが、現代にコミットした要素をしっかりと握っていると思う。言語化はしづらいけれど。)