レクリエーショナル・ビークル的音楽雑記

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日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その1-

最近の歌手ってみんな歌上手いけれど

Youtubeやサブスクでニューリリースの曲を聴く度、よく思うことがある。

最近のシンガーって歌上手くて当たり前の様な状況だよね、と。

 

時代と共にボイストレーニングも進化していき、尚且つ一般大衆性を強く帯びてきているし、その影響は計り知れないものがあるのだろう。

最近は一般の人でもプロクラスに歌が上手い人も時々見るし、日本の歌うことに対しての整備された土壌というのは素晴らしいなとしみじみ思う。

 

一方でそのシンガー特有の癖というか、絶対的な個性を持つ人というのが少なくなってきた様にも感じて、それは少し寂しく感じたりもするのだ。

整備された教育は、時として画一化を引き起こしてしまうのかもしれないな、と考えたりもする。

 

時代ごとの歌唱スタイルの変遷

では、昔はどうだったのだろう?

何だかんだ言って、そんな絶対的な個性を持つシンガーって昔もそうそういた訳じゃないんじゃない?

昔は昔で、時代ごとに共通した要素を持っているシンガーは多かったんじゃないか?

と思ったので、時代ごとの歌唱スタイルの傾向というものを、自分なりに考えてみようと思う。

 

1950年代:西洋音楽と演歌の原型を匂わす歌唱法

第二次世界大戦後の日本は、西洋音楽の要素が本格的に混ざっていき、現代邦楽としての地盤を徐々に確立させていく。

声楽やジャズ、シャンソンといった要素が強い曲や歌声が印象的な時代だけれど、同時に日本演歌の原型もどこか感じる様な時代である。

 

50年代の歌唱スタイルの所感

  • 深いビブラート
  • しゃくり、溜めといった演歌の原型的なニュアンス
  • 高音部は顕著な声楽的発声(裏声の要素が強い)
  • 歌唱エリート活躍の時代

 

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(皆さんご存知、美空ひばり。海外シャンソンの雰囲気も感じつつ、演歌歌謡に近しい雰囲気も歌声からは感じる。何でこの年齢からこんな歌上手いんだよって感じですが)

 

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(宝塚歌劇団に所属していた池真理子氏。経歴に違わぬ素晴らしい歌声。ジャズの匂いと同時に声楽的要素も感じさせる)

 

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(武蔵野音大出身という岡本敦郎氏。メロディへのニュアンス付けやビブラートは、やはり声楽仕込みといった感じ)

 

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(こちらも声楽出身の藤山一郎氏。ザ・昭和歌謡って感じの歌声)

 

1960年代:歌謡スタイルの発展と海外アーティストの影響が交錯する歌唱時代

世界的にカウンターカルチャーが流行した60年代。

海外ではビートルズローリングストーンズなどのモンスターバンドの活躍が目立った時代でもある。

日本では、昭和歌謡としての独自的な発展を見せていく他、フォークを中心とした海外のバンドの影響を色濃く感じさせるシンガーも出現する様になっていく。

日本歌手特有の癖が際立ち始めた時代であり、音楽性の交雑さが増し始めた時代でもないだろうか。

 

1960年代の所感

  • しゃくりや溜めなどの演歌特有の歌い方が確立される
  • 個性が強い独特の歌い方の実力派シンガーが輩出され始める
  • バンドやアイドルが乱立し始め、同時に正統派で癖が強くなく、聴きやすい歌声を持つ歌手が多く現れる

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(海外バンドのルーツの他、アイドル性をも兼ね備えていたザ・タイガースビートルズの影響が強いバンドだが、歌唱法的には日本特有のものを感じさせる)


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(某有名バンドボーカルの父親でもある森進一氏。演歌的要素が強くありつつ、これは物真似されるわなという灰汁の強さと歌唱力。流石である)

 

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(山本リンダアイドル歌謡を牽引した存在の1人。歌声の癖が強いんじゃ)

 

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(ジャニーズ事務所初期の代表的存在であるフォーリーブス。本格派歌手とは打って変わって素朴な歌い方が印象的。頑張って声を出している姿が目に浮かぶ)

 

1970年代:天才達の豊穣期

世界的な経済恐慌が起き、60年代から高度経済成長期を迎えていた日本にも一段落が訪れた時代。

ロックやパンク、ニューウェーブの流行が巻き起こった年代でもある。

日本の歌手としては、確かな実力派シンガーが多く現れた時代でもあり、歌謡界がややモダン的要素を帯び始める。

 

1970年代の所感

  • 典型的な歌謡スタイルから、バンドルーツな比較的モダンな歌い方までが入り混じった時代
  • スタンダードな声楽的発声から段々と離れていき、独特の癖を持ち合わせるシンガーが増えていく
  • また、当時は恐らく技術的な要素として認知されていないだろうが、力強いミドルボイスを使いこなすシンガーも、この辺りでスポットライトを浴び始める

 

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(今でもフォロワーが後を絶たない天才、井上陽水。この人の歌声は不思議なもんで古臭さを感じないのだ。圧倒的な存在感を放つ天性の声である)

 

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(嘘だろ、これが本当に70年代かよというモダンさを放つはっぴいえんど。脱力系ボーカルの先駆けである。生まれる時代が早すぎたのかもしれない)

 

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(軽快なロックンロールのグルーヴを背にアンニュイな歌声を放つ、サディスティックミカバンド。フォークからロックの進化過程みたいな印象を感じますね)

 

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(当時はお茶の間の大人気であったキャンディーズ。こう振り返ってみると、かなり正統派なアイドルである。歌い方も60年代の延長線上にある様なスタイル)

 

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(既に完成されすぎていて、笑ってしまう。サザンオールスターズ桑田佳祐はぶっちぎりの個性の持ち主である。当時のインパクトは良くも悪くも計り知れないものがあったかも)

 

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(圧倒的な歌唱力と60年代の系譜をモダンにした様な特性を持つ布施明。歌がうまいシンガーと言えばこの人みたいな感じ。ハスキー且つ突き抜けるようなhiAの迫力たるや)

 

 

 

ちょっと動画を紹介しすぎてしまったので、今回はこの辺りで。

続きは後日やります。