レクリエーショナル・ビークル的音楽雑記

音楽にまつわるお話を徒然なるままにします。好きなもの紹介・新譜レビュー等

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その3-

前回までのあらすじ

50~70年代の所感

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その1-


80年代の所感

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その2-

 

80年代でチャゲアスを取り上げようと思ったのですが、ミスりましたね。
今回も恐らく情報過多気味ですが、90年代のシンガーの傾向をまとめていきます。

 

1990年代:日本音楽黄金期、際立つキャラクターの時代

冷戦が終結、先進国ではテクノロジーが急速に発展すると、社会面で大きな動きがあったこの時代。

世界ではNirvanaを中心としたグランジの流行や、ヒップホップの台頭、ロックの衰退などが起こる。

 

日本では小室哲哉サウンドが流行。
また、バンドブーム最盛期の時代でもあり、ヴィジュアル系などの異色の存在がバンド業界を大きく活性化させていく。

(今回も80年代に引き続き男性、女性アーティスト別で紹介します)

 

 

男性シンガーの紹介

1990年代の男性シンガーの所感:

  • この世代辺りから、地声ベースのミドルボイス的発声が当たり前になっていき、楽曲のキーが平均的に徐々に高くなっていく傾向
  • ファルセットを多用するシンガーも徐々に現れる
  • 声質や発声に個性があってなんぼの時代、V系では特に顕著
  • 例には上げていないが、アイドルの声質・発声の均質化はこの世代から特に顕著である

 

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(ソロシンガーとしては紹介しない訳にはいかないLUNA SEAのボーカリストでもある河村隆一。彼の場合はどの時期をピックアップすれば良いのか分からない位歌い方が変化していくが、ソロ期以降は特に独特の発声に拍車がかかっている)

 

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(独特の世界観を放ち、ポップさと前衛さの両方を兼ね備える、たま。人気の理由はこの世界観が時代にフィットしていたからなのかも。知久寿焼のポップで軽妙な歌い方とのギャップが不気味である)

 

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(現在も活発に活動を続けるスピッツ草野マサムネの歌声は変な癖がなく聴きやすいのに個性があるのだ。マイルドに聴こえるが実は力強くもある完璧なミドルボイス)

 

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(日本のバンドの代表格と言っても良いミスチル桜井和寿の声は正に唯一無二。恐らく同世代のバンドと比べても完成度の高さが顕著なシンガーである。あと聴いてて思ったけれど、この発声を真似るのは結構危険)

 

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(当時のロックファンからカリスマ的な支持を得ていたラルクhydeについてはその天性の声質もさることながら、歌唱スタイルの独特さが突出している。また、当時以前の男性シンガーがファルセットを多用することがあまり無かった為、その辺りも持ち味とされていた)

 

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(日本では久保田利伸鈴木雅之の活躍以降、ブラックミュージックルーツのジャンルが徐々に市民権を得ていくが、ゴスペラーズはアカペラという新たな形態での商業的成功を収めた。マイルドかつグルーヴのある歌い方が特徴的。)

 

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(活動中期から音楽性がパンクに変化し、V系の中でもアウトローな雰囲気を醸し出していた黒夢。個性があってなんぼのV系シーンでは清春氏の他、癖の強い歌い方をするボーカリストが続出していた)

 

女性シンガー紹介

1990年代の女性シンガーの所感:

  • 小室ファミリー全盛時期は、線が細く甲高いシンガーの出現が多く目立った
  • R&Bのブームメントと同時に、ブラックミュージック的な発声技術が表出化する
  • 90年代中期~後半は、実力と個性を兼ね備えるシンガーの豊作期

 

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(90年代の顔とも言えるべき、社会現象を巻き起こした安室奈美恵。作詞・作曲に小室哲哉がつき、正に無敵と言える状態であった。この時期の歌い方は割と線が細く、甲高さが特徴的である。小室哲哉好みのスタイルといったところか)

 

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(こちらも小室ファミリーの1人、華原朋美。シンセの音も、PVもなかなか時代を感じさせる出来。歌い方としては初期の安室奈美恵と同様に線が細く、鼻にかかった様な出し方が印象的)

 

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(90年代を颯爽と駆け抜けたダンスグループ、SPEED。息をたっぷり使ったパワフルな高音域は、なかなか聴く側にもエネルギーを使わせる)

 

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(女性ボーカルのバンドというところでは、男性ボーカルに比べると多くなかった時代であったが、ブリグリは確かな存在感を放っていた。本格的なブリットポップライクな楽曲と、アンニュイでおしゃれな歌い方が特徴的)

 

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(生ける伝説宇多田ヒカル。なかなか声質で差別化させづらい女性シンガーの中でも、この人の特性は唯一無二である。ちょっとハスキーで鼻腔共鳴が強めな発声はアメリカ仕込みのものだろうか)

 

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(圧倒的な歌唱力と存在感。日本を代表するR&BシンガーのMISIA。土台がしっかりした力強いミドルボイスとヘッドボイス。この人は歳を重ねるごとに歌唱力が上がっていく。驚愕の一言)

 

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(特定界隈では絶対的カリスマである椎名林檎。個性的な歌い方と、ロックやポップスに限らずジャズからヒップホップまで歌いこなす圧倒的な引き出しの多さが素晴らしい。個人的にはポスト戸川純的な立ち位置かと思っている)

 

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(デビュー後、瞬く間に女子高生のカリスマとなった浜崎あゆみ。この人はハイ域の発声時に声をホールドする独特の癖がありますね。恐らく理想的な出し方ではないものの、それが持ち味になっている)