レクリエーショナル・ビークル的音楽雑記

音楽にまつわるお話を徒然なるままにします。好きなもの紹介・新譜レビュー等

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その5-

前回までのあらすじ

50~70年代の所感

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その1-


80年代の所感

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その2-

 

90年代の所感

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その3-

 

00年代の所感

日本のシンガーの発声スタイルの変遷-その4-

 

変遷のまとめは今回で最後になります。(総括は別でやるかも)

遂に直近の音楽シーンである2010年代を考察していきます。

 

2010年代:混迷と復興、技術の飛躍的進化

未曾有の天変地異や新興感染症などのトラブルが相次いだ2010年代。
一方で、テクノロジーの進化が加速化し、スマートフォンが爆発的に普及した年代でもあった。
2010年代半ば頃からはYouTuberというビジネスモデルが確立。
新たなセルフプロデュースの場が生まれた。

 

音楽的なトレンドでいうと、世界的にはバンド音楽が音楽市場の主流からはしごを外され、EDMやヒップホップがブームメントを支配する。

日本に於いてはCD売上の衰退と共に音楽チャートをアイドルが支配する時期が続くが、2010年代後半以降は独自的なブームメントを発展させる。
バンド音楽の再興、ボカロPの影響力の増加などが印象的な流れであった。

 

男性シンガーの紹介

2010年代の男性シンガーの所感:

  • ミドルボイス~ヘッドボイスの切替をはじめとした、歌唱技術の目に見えた向上が見られる
  • ファルセット、ヘッドボイスを多用する歌い方が主流となる
  • どちらかというと、持ち前の声質で聴かせるというよりも、歌唱技術で魅せるシンガーが多い傾向にある時代。ボイストレーニングの普及の影響か
  • 上記の影響で、高音域を得意とするシンガーが多く現れる

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(2010年代の国内音楽情勢に於いては、最終的に彼が領土を掻っ攫っていたと言っても過言ではない。ボカロクリエイター時代から才能を遺憾無く発揮し、とうとうトップにまで上り詰めた恐ろしい存在。声質にも恵まれており、割とBUMPルーツを感じさせる歌声は耳馴染みも非常に良い)

 

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(2010年代中頃までは、よくニュースでもその名を見かけることも多かったback number。音楽的には2000年代のPOPSの流れを汲んだ感じのものが多い。マイルドで優しげなハイトーンが特徴。ミドル~ヘッド域の切替も非常に上手い)

 

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(2010年代でメガヒットを巻き起こしたバンドとしては最もスキルフルな存在ではないか。4人のキャラクターも非常に立っており、90年代のバンドにあったカリスマ性に近いものも感じさせるking gnu。井口理は天性の声質もそうだが、何より発声技術のレベルがすこぶる高い。ヘッドボイスの質は日本のトップシンガーの中でも指折りのものを持つ)

 

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(2010年代にヒットしたバンドの代表格であるofficial髭男dism。ポリバレントな才能を持つ藤原聡は、出ちゃうんですよねと言わんばかりの鬼ハイトーンの持ち主。そりゃあ人に歌わせるんじゃなくて自分が歌った方が思い通りの表現が出来るわな)

 

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(ダンスミュージックに関しては、依然としてLDH系列のグループの影響は大きい。ATSUSHI系列のボーカルスタイルの人がやはり目立ちますね。芯が細めの裏声よりのミドルボイスが印象的)

 

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(世界基準の音楽、クオリティを放つONE OK ROCKは、若年層のロックファンの心を掴んで離さなかった。両親譲りの抜群の歌唱力を誇るTAKAの歌声は正に唯一無二。天才から生まれる子も、やはり天才ということか)

 

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(皮肉なことにバンドとしての名声でよりも先に、川谷絵音のスキャンダルでその名が広まったゲスの極み乙女。だが、その実力は折り紙付きである。川谷絵音の歌声は好き嫌いこそ分かれそうな気もするが、現代の歌唱スタイルのテンプレートを1つ作り出したと言ってもよい)

 

女性シンガーの紹介

2010年代の女性シンガーの所感:

  • 幅広いジャンルでヒットシンガーが生まれる
  • 少し80年代感のある歌い方をするシンガーから、最近の洋楽ライクな歌い方をするシンガーまで幅広く出現し、マクロで見た時の歌い方の共通項は見出しづらい
  • 一方で、アイドル界隈、ボカロ界隈などのミクロな分野で見た時の歌い方の傾向としては、先駆者のルーツを強く感じさせるものが多い
  • 声質自体の個性というよりは、歌い回しやニュアンスで差別化する要素が大きい

 

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(鬼滅の刃ブーストで一気に日本のトップシンガーに躍り出たLiSA。歌声の系譜としては、やはりアニソンシンガー特有のらしさを感じさせる。ちょっと鼻にかかった様な、僅かにハイラリ気味な様に聴こえるミッドハイ〜ハイが印象的。)

 

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(最近では珍しい正統派な歌姫としての素養を持つmilet。音楽性的にはauroraっぽさがあるエレクトロポップ〜日本的なポップスまで、守備範囲が幅広い。声質的には平原綾香にも近い特性を持ち、ややハスキーで洋楽っぽさも醸し出すミッドローの歌い回しが特徴的である)

 

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(そのキャラクターもさることながら、少し懐かしさのあるメロディーラインや歌詞の世界観で若者を中心に絶大な支持を得たあいみょん。歌声にも少し歌謡的要素を感じるのは彼女のルーツとしている音楽の影響か)

 

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(西野カナは完全に00年代のR&Bシンガーの流れを汲む歌唱スタイルである。その世界観が先行して印象に残りがちだが、歌唱力は確かなものを持ち、力強いミッド〜ハイは安定感が抜群。皮肉なことに、若年層の女子達を中心に支持を得た彼女が作り出した世界観は、完全なるマーケティングであることが発覚したのだが)

 

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(2010年代末期に産み落とされたこの楽曲は、ボカロPとシンガーというユニットの市場的脅威性を世に知らしめたかもしれない。ikuraの声質については絶対的個性という要素を必ずしも持っている訳ではないが、技術に於いては間違いなくエリート的なセンスを持つ。ただ、こういう癖のないミニマルな歌声の方が、現代のニーズにはハマっているのかも)

 

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(まさかロブハルフォードと共演をするアイドルが現れるなど、彼女達が出てくる前に誰が想像したであろうか。BABYMETALの活躍は、後にラウド系のサウンドを展開するアイドルグループを多く生み出すことになった。SU-METALの歌声はメタルシンガーとしては癖がなく、一般受けもされやすい。ただ、将来的には彼女が本当にやりたい音楽性での歌声を聞いてみたいと個人的には思っていたりもする)

 

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(病み系の世界観が一定層から多大な支持を得ている大森靖子。喚き散らす様なエモーショナルな高音部の歌い方が新しく、世界観にもガッチリハマっている。旦那が有名某バンドのドラマーなので、その辺りの影響も受けていたりするんだろうか)