レクリエーショナル・ビークル的音楽雑記

音楽にまつわるお話を徒然なるままにします。好きなもの紹介・新譜レビュー等

癖強アーティスト紹介 vol.1 -GEZAN-

先日、こんなニュースが。

qetic.jp

思わず我が目を疑いましたが、やはりこの様なご時世、どうしても現在に於ける自己の人生の立ち位置というものを考えざるを得ない様な状況に直面することもあるのだろうと思います。

カルロス氏の今後のご活躍をお祈りいたします。

 

ということで、この様な感慨深いこともありましたので、今回はこのバンドを紹介していきます。

大阪発のオルタナティブロックバンド、GEZANです。

概要 

メンバー

  • マヒトゥ・ザ・ピーポー (Vo)
  • イーグル・タカ (Gt)
  • カルロス・尾崎・サンタナ (Ba) (※2020年を以て脱退)
  • 石原ロスカル (Dr)

 

最近ではPARCOのCMに起用されたことも、記憶に新しい。

PARCOの企画サイドの方々のセンス、素晴らしいですね。

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このバンドについては僕がどうこう語るよりも、実際のパフォーマンスを見てもらった方が断然良いと思いますので、下記のキレたパフォーマンスを是非ご覧ください。

めちゃくちゃかっこいいです。

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社会を風刺した鋭利かつ優しい世界観

GEZANの大きな武器の1つは、やはりマヒトゥの独特な歌詞観でしょう。

世の中を因果の集積的な目線でかつ問題性を分解して見ることが出来る彼の感性は、日本のミュージシャン界隈の中でも、ずば抜けて洗練されたものを有していると思います。

 

「replicant」

首をくくってる 五輪の輪っかで
やさしくない哺乳類の遊園地
踊り疲れて
渋谷の街が失った分別
ハッシュタグのつけられている偽善
視覚聴覚メルカリでまず売って
バグった正義つくってた文明

現代の文明社会や社会動向に疑問を呈した、我々の心にソリッドに突き刺さる様な歌詞を展開する一方で、

 

「証明」

hey siri いつまで我慢すればいい?
ok google どのへんがokなんだ?
10年後まで自粛すればそれで満足か?
100年後まで自粛 それで満足か?

生きているならここで証明しよう
飛ぶでも叫ぶでもいい 証明しよう
何も目を閉じるな 証明しよう
We have a voice, your own voice. shout!

我々オーディエンスにポジティブなエネルギーを与えてくれる要素や、

 

「東京」

政治と言葉にした時
一番最初に浮かんだフェイス
安倍やトランプその他諸々のdirty faceではなく
花を見て笑う
好きな人の顔であるべきだから
東京 言葉にした最初のイメージ
夢の墓場 ビルの墓跡 曇天の空 そうじゃなくて
君と歩く いつもの帰り道であるべきだから
それまでは戦いは終わらない 

強く優しいメッセージを放つもの等、社会を風刺する鋭利さと優しさを兼ね備えた多面性が特徴と言えるでしょう。

(念の為言っておくと、この歌詞のチョイスは僕の政治的意向とは全く関係ありません)

 

同時に、作品ごとにコンセプチュアルな傾向が強いGEZANの作品に於いて、マヒトゥの歌詞は非常に強い構築美を感じさせたりもするので、是非アルバムを通して注視して頂きたいところ。

 

多彩な表現とサウンドメイク

上述でも軽く話した通り、GEZANの作品はコンセプチュアルな傾向が強いです。

それはサウンドメイクについても顕著に表れていて、アルバムごとで音楽性がガラリと変わるのも特徴の1つと言えるでしょう。

 

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アンビエントやノイズ等、実験音楽の要素が強い1st「かつて うた といわれたそれ」収録曲である「春の膝」

クリーンギターのフレージングが幻想的かつやや不気味である。

残響の様に聞こえてくるマヒトゥの声からは、輪郭がはっきりしない靄がかった世界の様な情景が浮かんでくる。

 

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1stとは打って変わって骨太なオルタナロックの要素を展開して見せた2nd「凸-DECO-」の収録曲「癲癇する大脳たち」

変則的なリズムや展開が彼らのスキルの高さを証明している。

 

 

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4th「Silence Will Speak」収録曲「NO GOD」

ドゥームなハードコアの要素が内在したオルタナティブミュージックの真骨頂と言える楽曲。

個人的にはこの4th以降で、彼らの音楽性・スタイルが確立したと思っています。

 

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5th「狂(KLUE)」収録曲「赤曜日」

Dubのニュアンスを醸し出しつつ民族的なフレージングが印象的な5thは、全ての曲がBPM100に設定された、コンセプト的なアルバム。

作品の構成/流れが非常に素晴らしい。最高傑作と言っても過言ではない。

 

ハイセンスなアートワーク

彼らを彼ら足らしめるものとして、秀逸なアートワークは外すことの出来ない要素。

数ある日本のオルタナティブロックバンドの中でも、非常に際立ったセンスを放っていると言っていいでしょう。

 

狂(KLUE)

ひょっとこ踊りの踊り手をジャケ画にした「狂(KLUE」。

マヒトゥ曰く、お面を付けて自我が無くなるまで踊り続けるというひょっとこ踊りのスタンスは、このアルバムでの表現を象徴しているものであるという。

 

gezanメンバー写真

引用元:GEZAN | official site.

公式のアー写。色彩感といい完璧なバランスとセンスですね。

 

 

マヒトゥ・ザ・ピーポー(著), 佐内 正史(写真)