レクリエーショナル・ビークル的音楽雑記

音楽にまつわるお話を徒然なるままにします。好きなもの紹介・新譜レビュー等

音楽とファッション -ムーヴの相関とこれから-

音楽とファッションは切っても切り離せない関係性にある。

それはいつの時代もそうだったし、現代に於いても例に漏れない筈。

ファッションも音楽も、その時代の文化的背景から醸成、成長してきたものだ。

今回はその音楽とファッションの相関と、これからの未来について個人的に考えていきたい。

 

ファッションと音楽が社会的なリアクションであった時代

音楽のムーヴメントは、その当時の社会の体制と非常に結びつきが強いことは歴史が証明している。

例えばジャズは体制的な白人の為の西洋音楽(クラシック)に対する反抗姿勢を以て生まれたものだし、ロックミュージックは、青少年の反乱とも呼ばれるものであった。

音楽のジャンルはその当時の社会に対するリアクションによって生まれたものも多いのである。

またファッションについても、そこに呼応する様に発達してきたものの内の1つと言える。

 

ムーヴメントを博してきた音楽とそのファッション

f:id:sagi_vo:20210220212331p:plain

引用元:SEX PISTOLS 公式

 まず、オイルショックの不況と共に反体制的なジャンルとして一時期の世を席巻したパンクロック。SEX PISTOLSはその代表格の1つであるが、彼らの衣装は現代に於いてもファッション界のトップに位置するVivienne Westwoodと共に端を発したもの。

彼らのスタイルは、パンクファッションとして今も尚多くの人々に愛されている。

 

f:id:sagi_vo:20210220213555p:plain

引用元:ARBAN

また、ジャズと言えばスーツのイメージが強いジャンルで、50、60年代当時のジャズマン達は皆アイビールックの出立ちであった。

こちらについても、元々マンハッタンにあるハーレムの街で生まれた筈であるアイビールックが白人達の間でもベーシックな装いとなっていった為、その主権を取り戻す為にジャズマン達はアイビールックに身を包んでいた、という話もある。

 

f:id:sagi_vo:20210220234252j:plain

引用元:flickr.com

そして言わずもがなご存知であろう、60~70年代のヒッピーファッションはサイケロックと密接な関係性にあった。

彼らは既成社会的な思想に反旗を翻し、男女平等や性解放、大麻解禁などの自由性を求め続けた。

その他にも数多のジャンルが社会の動きと連動、発達し、またファッションもそこに呼応するかの様に変容をしていった歴史がある。

 

商業主義の現代に於ける現代の音楽の影響力

一方で、現代の商業主義先行的な音楽業界にとってのファッションの立ち位置はどうだろうか。

昨今の音楽については、社会動静に対する影響力が変化していると個人的には見ている。

何かに対する反抗としての集団形成的な力は、昔よりも強くないのではないか。

 

www.youtube.com

勿論最近でもChildish GambinoのThis Is Americaの様に、痛烈なメッセージ性を放つものが大きな話題を呼ぶことは決して珍しくはない。

しかし、その様な作品が端を発し、大きな社会現象として世の人間を動かすまでには至っていないのではないだろうか。

既にコンテンツの飽和化という領域に達してしまった現代に於いては、音楽は社会動静に対する反抗としてのメインツールにはなりづらいのだ。

そういう意味で現在の音楽は、昔はあった筈の社会的反抗や反旗という内在的なエネルギーの質が変容した状態になった、と言ってもいいのかもしれない。

 

記号と化したファッション

では、そのエネルギーの質が変容した音楽に対するファッションの立ち位置はどの様なものになるのだろうか。

ファストファッションが発達し、ミニマルやシンプル性が全面的に浸透した現代のファッションは、個々人のライフスタイルに如何に迎合出来るか、というのが1つのポイントになっている。(最近ではファストファッションの浸透の反動として、別途サスティナブルの概念が強まりつつあるが、ここの話とは関連しなさそうなので、置いておくとしよう)

 

そこに伴い僕が強く感じている印象としては、「表現するジャンルに対して、如何に適切なイメージを与えているか」という記号的な立ち位置に変化していったと思っている。

つまり、当時の世を席巻した音楽のファッションイメージを、如何に崩壊させずに現代風にコミットするか、ということだ。

 

www.youtube.com

例えば新進気鋭のロックバンド、Starcrawlerを例に挙げよう。

彼らは10代の内からデビューした若いバンドであるが、その風貌は70年代の雰囲気を強く感じさせる。

彼らのポップロック的音楽と、ファッションは密接な関係性を強く感じさせる。

 

www.youtube.com

ファンクやソウル、ヒップホップ的アプローチを得意とするKing Gnuについてもそうだろう。系統は曲によりけりだが、彼らのファッションはその手のジャンルのイメージに対して、大きなズレはない筈である。

 

www.youtube.com

逆にモダンなジャンル(上記の例だとDjent)だと、過去のファッション的な影響や制約は特に受けない為、至ってシンプルな服装であることが多い。

EDM系のアーティスト達もその一例であろう。

それがかっこいいかどうかはともかく、現代なりのアウトプットや表現と言える。

 

これからの音楽とファッション

現代でも既にそうだが、音楽とファッションとの関係性についてはあまり強固ではなく、個々独立した発展を見せていき続けるというのが個人の見解である。

音楽に呼応する様にファッションが変化していくのではなく、新進のジャンルに対してはその時にトレンドであるファッションがたまたま適合されるであろう、という見方をしている。

 

※日本に於いては顔出ししないアーティストが多いボカロ界隈はともかく、ファッショナブルなアーティストが多い気がしますね。最近までシティポップのトレンドが強かった影響もありそうですかね。